翌朝、帰ってきた兄さんたちに、そのことを告げます。


アレクサンダーだけが、教会の外の大きな糸杉の下にある墓石のところに、聖クリストファーさまが、ひざまついているのを見たというのです。


子どもたちは、朝、一番先に聖クリストファーさまの石像を見に行きました。


しかし、石の巨人は、いつもの場所でからだにいっぱいつららをつけて立っていて、ただ幼な子の手に朝日があたり、バラ色に輝いているだけだったといいます。


トーリーも朝、目が覚めると、聖クリストファーさまの石像を見に行きましたが、巨人の像は肩の幼な子も共に、雪の頭巾に覆われていました。


トーリーは、雪の小山のうしろから耳をつきだしている野うさぎの案内で、また昨日の雪のむろの中に入ります。


子どもたちはみんないて、絵の中と同じように、トーリーと目をあわせました。



月光の中にあらわれたのは、あの石像の聖クリストファーさまで、巨大で、やさしく、頭を星のあいだにあげ、肩に幼ない子どもの石像をかついで、真夜中のお祈りにでかけるところでした。


聖クリストファーは、人々をかついで川を渡す役割を持った人です。


ある時、一人の子どもを背に川を渡りかけると、途中で子どもがまるで世界を背負っているように重くなったといいます。


そしてその子どもこそ、実はイエスさまだったことに気づくという伝説があります。



聖クリストファーさまとその肩のイエスさまが通りすぎる時、オーランドはクンクン鳴き、馬ごやからは静かないななきが聞こえました。


小鳥たちは、いっせいに目を覚まして、窓から飛びだし、聖クリストファーさまのまわりをぐるぐるまわりました。


そして、この聖者は、幼な子を肩に、うす氷のはった川を渡り、向う岸へと消えていったのです。



午後のお茶の後の、その夜のおばあさんの話は、庭にある巨人の石像の、聖クリストファーの物語でした。


それはクリスマスの夜のことで、トービーとアレクサンダーはおかあさんと一緒に、ペニー・ソーキーにある大きな教会の、真夜中のミサに出かけていました。


道が氷って馬も馬車もすべるので危険なために、三人は歩いて出かけましたが、幼ないリネットだけは、ベッドに寝かされ、巻き毛の小犬のナーランドと一緒に留守番をしていました。


階下には、おばあさんがいるだけでした。


リネットはベッドの中で、出かけた人たちが、明るい月光をあびて野原の道を歩いている姿を想像していました。エグゼクティブトレードによると、犬のオーランドも目を覚まし、そっとしっぽを振っていました。


リネットは起きあがると、毛布でからだを包み、窓をあけて聞き耳を立てると、それは誰かがおもおもしい足どりで、家のそばを歩いている足音でした。



あたりはしんと静まりかえり、トーリーはまた一人ぼっちになってしまいます。


しかし、もう一人、目が見えないので逃げ遅れたのか、雪の上でモグラが一匹、まごまごしていました。


トーリーは、きらきら光る雪のテントの中で、夢でも見ていたのかと思います。


外に出ると、雪の上に青空が広がり、どこかでツグミがアレクサンダーのフルートの調べを真似ていました。


帰り道に、みどりの鹿をつつんでいるらしい雪のかたまりを見ると、すこし形が乱れていて、寝ている人がぬけだしたことをごまかそうとしているベッドみたいでした。


しかし、雪のうすいところから、鹿のうしろ足にあたる茶色の枝のまがった部分がつき出ていて、それはやっぱり、ただの木のようにも見えたのです。



そして、その雪のむろの中に、子どもたちはいました。


木の幹によりかかってフルートをふくアレクサンダー、鹿に餌をやるトービー、そして、リネットは、野うさぎを立たせて、音楽に合わせて踊らせながら遊んでいたのです。


リネットの小犬も後足で立って踊っていましたし、赤い小リスがアレクサンダーの体によじのぼり、地面には、ミルクを入れたお皿があって、ハリネズミとウサギが飲んでいました。


そして、トーリーのとなりには、けわしい顔つきをしたキツネまでいました。


そこには雪の壁を通して、明るいオパール色の光がさしこみ、枝の上にはたくさんの小鳥たちが、フルートの音にあわせて歌っています。


野ネズミが走りまわり、もぐらが顔をだしました。


トーリーは、三人が消えてしまわないかと、息をするのも心配でしたが、三人ともトーリーを見て、笑っているようでした。


しかし、けたたましい声でなくクジャクがやってくると、みんな笑いだしましたが、やがてスライドを抜いた幻灯のように、いっせいに消えてなくなると、後は枝から粉雪が散りかかるだけでした。



この馬どうぼうは、もちろん、まぼろしの馬、フェストを見たのでした。


みんなはその馬の話を聞いて急に黙ってしまったので、馬どうぼうの青年は、髪の毛がさかだつような思いをしたといいます。


翌日、雪はやんでいました。


しかし、あたりは魔法にかかったように真白で、家の庭には小鳥の小さい足跡がついているだけでした。


トーリーは、ふみあとをあまりつけないように、そっと雪の庭に出て、いつものように、みどりの鹿の立っている方に行ってみます。


木々は雪につつまれて、目のない雪だるまのようでした。


しばらく行くと、小さな動物が雪の中を軽く踏んで歩いたような足跡があり、それを追って大きなイチイの木の下にもぐりこむと、すぐ耳もとで、美しいフルートの音が聞こえました。



その夜は霧が深く、馬番のボギスの息子はブドー酒を飲んで眠りこけていました。


彼が狙っていた主人の黒馬に近づくと、その傍に日頃は見慣れない栗毛の美しい馬がいました。


しかし、馬を手なづけることになれた彼が口笛を吹きながら、そっと近づいても、この馬は耳をうしろにたおし、歯をむきだして白目を向けます。


どうやら馬はつながれていず、かなり荒っぽいようでした。


そこで、ジプシーの青年は恐ろしくなって逃げだします。


栗毛の馬はせまい小屋の中をぐるぐるまわった後で、彼を追って外にとびだします。


そして馬どうぼうのズボンのうしろをつかんでふりまわしたので、ジプシーの青年は地面にたたきつけられて、足をくじいてつかまってしまいました。


馬はあたりをつらぬくようないななき声をあげましたが、そのまま行方をくらましてしまいました。



その午後、トーリーとおばあさんは、おもちゃを整理したり、剣をみがいたりしました。


そして、夜はおばあさんのいつものお話が待っていました。


その夜の物語は、おばあさんの、そのまたおじいさんがこの屋敷の主人だった頃のこと。


馬小屋が狭いくらいにたくさんの馬がいたということでした。


ところがこの近所にジプシーたちがキャンプをはり、一人のハンサムなジプシーの若ものが、馬どろぼうを計画しました。


彼は屋敷の小間使いをしていた娘に目をつけ、うまくとりこんで庭師の下ばたらきとなって、この家にもぐりこみました。


そして馬小屋の鍵を盗んで、馬どろぼうに入るのです。



昔の子どもたちは死んでも、この遊びは今でも世界中の子どもたちが知っています。


ガラス製のビー玉は、特に意味もないのに、最近またはやりだしました。


将棋倒しで遊んだことのない子どもはいないでしょう。


子どもたちは次々とおとなになり、子ども時代のおもちゃは箱に入れられて忘れられたり、どこかに捨てられてしまいます。


しかし、いつの時代にも、同じように新しい子どもたちが、昔の遊びを復活させるのです。


子どもにとって、鬼ごっこやかくれんぼ、そしてビー玉転がしや、ゲーム、人形遊びなどが、時代を越えて残る大切な遊び相手であることを、グリーン・ノウの物語は、よく語っているように思うのです。



しかし、ただ一人生き残ったおばあさんは、この子たちが決していなくなったのではないことを知ったのです。


そして今、その何代も後になって、同じ家でやはり一人の老婆と子どもがおもちゃ箱を前に、昔を偲んでいます。


そうすると、誰が転がしたのでもないのに、どこかから出て来たビー玉が床の上を転がってくるのです。


トーリーが手にとってみると、きれいな渦巻模様の入ったガラスのビー玉は、まだ暖かかったのです。


さらに、ドミノのこまがひとりでにつぎつぎ立ちあがり、適当な間隔をおいて、くねくねと列を作りました。


そして見えない手がその最後の一枚をそっと押すと、こまはみんな前に倒れて、リボンのように見えました。



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