


その夜は霧が深く、馬番のボギスの息子はブドー酒を飲んで眠りこけていました。
彼が狙っていた主人の黒馬に近づくと、その傍に日頃は見慣れない栗毛の美しい馬がいました。
しかし、馬を手なづけることになれた彼が口笛を吹きながら、そっと近づいても、この馬は耳をうしろにたおし、歯をむきだして白目を向けます。
どうやら馬はつながれていず、かなり荒っぽいようでした。
そこで、ジプシーの青年は恐ろしくなって逃げだします。
栗毛の馬はせまい小屋の中をぐるぐるまわった後で、彼を追って外にとびだします。
そして馬どうぼうのズボンのうしろをつかんでふりまわしたので、ジプシーの青年は地面にたたきつけられて、足をくじいてつかまってしまいました。
馬はあたりをつらぬくようないななき声をあげましたが、そのまま行方をくらましてしまいました。
